質問1 事業場で実際には支給されていない手当が、就業規則にミスで規定された場合、使用者はその手当の支払義務を負うか?
⑴ 東京にあるY社は、従業員8人で平成10年4月1日から精密機械の運送事業を開始し、順調に業績を伸ばして、平成20年度の終わりごろには事業収入が13億円となり、従業員も増加して20人、パート10人となりました。Y社は、これまで従業員の賃金等の労働条件については雇い入れの際に労働条件通知書を渡して、それに署名してもらって決定してきました。Y社の代表取締役である私は、労働法についてはよく分からないので、社会保険労務士に頼んで就業規則を作成してもらい、労働基準監督署長にも届け出て、本社では従業員の誰もが自由に見ることができるようにしてきました。これが平成11年の4月初めの頃だったのですが、今年9月初めぐらいに地域の合同労組から皆勤手当と無事故手当の過去2年分の支払いを求める団体交渉の申し入れを受けました。私はY社には労働組合がなかったものですからびっくりしましたが、その要求内容を見てみると、就業規則に皆勤手当1万円、そして無事故手当2万円の規定があるので、就業規則の規定に従ってこの手当を支払ってくれということでした。
⑵ Y社は、会社設立以来、労働条件通知書には、日給1万円と通勤手当1万円と記載しており、皆勤手当や無事故手当の記載はなかったのですが、社会保険労務士が8年前に就業規則を作成する際に皆勤手当と無事故手当の規定を新たに記載したことが分かりました。
⑶ そこで、質問です。私と社会保険労務士とが就業規則の作成の際に打ち合わせを十分しなかったため、労働条件通知書と就業規則の規定との間に食い違いができてしまったのですが、皆勤手当や無事故手当を支払わなければならないものでしょうか?私としては、就業規則の作成に際しての打ち合わせが不十分だったことは認めますが、就業規則の内容が実際の給与の支払われ方とは異なるミスによるものである以上、皆勤手当や無事故手当を支払う必要はないと考えますが、いかがでしょうか?
⑷ この点、私の顧問弁護士に聞いたところ、労働条件通知書の賃金欄に皆勤手当や無事故手当の記載がない以上、それは皆勤手当や無事故手当を支給しない旨の合意があることを意味する一方、実態とは異なって作成された就業規則は何らの法律的な力もない、とのアドヴァイスをもらいました。団交では、弁護士のアドヴァイスのとおりに回答しようと考えているところです。